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地震の強さと瑕疵担保責任

 東日本大震災では多くの家が倒壊したり傾いたりしました。住宅供給会社はこれまで大地震が来ても大丈夫ですと当たり障りのない説明をして供給してきましたが、地震の後では天災につき免責とさせていただきます、と言って知らないふりをするのが建設業界、および保険業界の常識となっています。

何とかならないものでしょうか。

建築基準法施行令では、その36条の3で、

(構造設計の原則)
第36条の3 建築物の構造設計に当たつては、その用途、規模及び構造の種別並びに土地の状況に応じて柱、はり、床、壁等を有効に配置して、建築物全体が、これに作用する自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して、一様に構造耐力上安全であるようにすべきものとする。

と、記載されています。地震については、例えば「震度6強で倒壊しないようにすべきものとする。」と書かれていれば一般消費者には判り易くなり有り難いのですが、法律をブレークダウンしてもそうは書かれていないようです。

福島第一原子力発電所では想定外の高さの津波が襲って重大な被害が発生しました。一応津波の高さを想定して設計しています。
建築基準法では、ターゲットとすべき地震の強さについての想定はしていません。
 

品確法(住宅品質確保促進法)では、その第3条で日本住宅性能表示基準を定めるものとし、新築住宅の耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に基準を設けています。
耐震等級3は、

極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍の地震力に対して倒壊、崩壊等しない程度

とされ、耐震等級2は、1.25倍、耐震等級1は、1倍とされています。巧妙な書き方のような気もします。
専門家が、素人を煙に巻く時の材料として使わないようにしたいものです。

想定以上の地震が来た場合、この先数百年は来ませんから安心してお眠りくださいと、お墓の前でつぶやけば免責してもらえるかも知れません。

極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍とは、震度階級で言えば7くらいなのでしょうか。
有史以後小規模な地震の記録しかない地域は、震度4程度で倒壊しても想定外の地震だと主張すれば免責となるのでしょうか。

以上の2つの法律は、倣って設計すれば倒壊しないように努力することはできます。

震度階級について研究する必要がありそうです。最近、震度階級を判決文に採用する判決が増加しているように思います。
気象庁によれば、
 

計測震度の算出方法 

 計測震度は、震度計内部で以下のようなディジタル処理によって計算されます。
2000年10月6日に発生した鳥取県西部地震の米子市(計測震度=5.1)を例に示します。

  1. ディジタル加速度記録3成分(水平動2成分、上下動1成分)(図1)のそれぞれの フーリエ変換(図2)を求める。

  2. 地震波の周期による影響を補正するフィルター(図3)を掛ける。

  3. 逆フーリエ変換を行い、時刻歴の波形(図4)にもどす。

  4. 得られたフィルター処理済みの3成分の波形をベクトル的に合成をする。

  5. ベクトル波形(図5)の絶対値がある値 a 以上となる時間の合計を計算したとき、これがちょうど 0.3秒となるような a を求める。この例ではa=127.85galとなる。

  6. 5.で求めたaを、 I = 2 log a + 0.94 により計測震度 I を計算する。計算されたIの小数第3位を四捨五入し、小数第2位を切り捨てたものを計測震度とする。

地震情報などにより発表される震度階級は、観測点における揺れの強さの程度を数値化した計測震度から換算されるものです。(表1)

表1 気象庁震度階級表

震度階級

 計 測 震 度 

震度階級

 計 測 震 度 

0.5未満

5弱

4.5以上5.0未満

0.5以上1.5未満

5強

5.0以上5.5未満

1.5以上2.5未満

6弱

5.5以上6.0未満

2.5以上3.5未満

6強

6.0以上6.5未満

3.5以上4.5未満

6.5以上


 

東日本大地震.jpg

写真は asahi.com  より

 この震度とは、日本独自の評価方法とのことです。建築基準法や、品確法とコラボレーションできないものかと考えてみました。

例えば、震度6強で倒壊しないようにすべきものとする。」 と法律・基準を決めれば、各住宅会社は震度6強と評価・計測される最大の水平力等で構造計算し、各種波形で振動台を揺らして試験すればよい訳です。

震度6強と評価される標準の揺れパターンデータを何種類か作成することはできます。3次元架構データをパソコン画面で揺らしてみれば、倒壊するかどうかはわかります。

品確法の耐震等級3は、地盤性能を調査・改良した上で、震度7は無理としても震度6強の地震で倒壊崩壊等しない。」 として見たらいかがでしょうか。

KK省は、KS庁の基準は使えないのかもしれません。消費者に判りやすい基準にすることを優先してほしいものです。

経年劣化が原因によるものとの区別は、他の部位の瑕疵担保責任と同様の判断基準となります。

建物が倒壊・変形等はしないまま傾いた場合は、地盤の性能によるものですが、例えば、震度6強6/1000以上傾かないようにすべきものとする。」 として見たらいかがでしょうか。

業界団体のかきまぜに負けないだけのシンプルさ・判定のしやすさが大事だと思います。そうしないと瑕疵担保責任を問う入口に立てません。

このようにすることで、自信の持てる会社だけが、土地造成/地盤改良/住宅を作るようになります。建てる人は、建てる気にもなり、そういうところにしか頼まなくなります。

消費者は、住宅が崩壊しないようにあるいは傾かないように、いかに努力/計算してくれたかではなく、崩壊したのかしなかったのか、あるいは傾いたのか傾かなかったのかについてのみ、どうしても評価します。

 


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