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消費者契約法施行(2001年)以後の更新料全額に返還命令

香辛料なみにスパイスの効いた判決です。

賃貸更新料、2審の大阪高裁「無効」…借り主が逆転勝訴  (2009年8月28日 読売新聞)

消費者契約法施行(2001年)以後の更新料全額に返還命令が出されました。

1審判決は更新料を賃料の前払いとみなしたが、成田裁判長は「かなりの高額で前払いとみるのは困難。借地借家法では正当な理由なく家主は契約更新を拒否できないと定めているのに、説明せず更新料の支払いを義務づけている」と指摘。さらに「更新料という言葉で経済的な負担が少ないかのような印象を与え、契約を誘因する役割を果たしていると言われてもやむを得ない」と批判し、
ました。

被告は更新料について、「更新拒絶権放棄の対価である」と主張(4点の主張の内の一つ)していました。

日本語で言うと、「賃借人がこのまま住みたいと言って来ても、大家にはこれを断る権利がある。この権利を放棄する代わりに更新料を払いなさい。」・・・・と言う意味です。

この主張に対し司法は、上記 借地借家法を根拠に、
「事業で賃貸借をしている以上、正当事由があり更新拒絶が認められるということはまずないので、放棄する更新拒絶権がそもそもない。」
と判断しました。

「正当な理由なく家主が更新を拒絶できないと定めた借地借家法を説明せずに、更新料支払いを義務付けた。」点に違法性を認めている事が注目されます。

この判断を覆すには、 借地借家法の改正が必要となる事になります。

更新料を家賃の前払いだとする主張も退けられました。
貰いたい更新料分は、家賃で取りなさいと言うことの様です。

8月27日夕のNHKニュースでも取り上げられています。

全国賃貸住宅新聞2009/07/27
においても、この判決の行方が注目されていました。

支払い済みの更新料4回分など計45.5万円の返還を家主に求めていますので、今後各地で更新料返還訴訟が頻発することでしょう。

また、上告するそうですから最高裁判決が注目されます。

この京都の例は、1年に1回、約2か月分の香辛料ですが、関東地方では、2年に1回、1か月分の香辛料が平均的ですから、金額は1/4となっています。
関東地方での賃貸契約書に書かれている更新料条項にも違法性(無効)を認めるかどうかが注目されます。件数を掛ければ、経済的効果にインパクトは絶大ですから。
必ずどなたかが、関東地方でも更新料返還訴訟を起こしますよね。消費者重視の時勢ですから、司法の判断に注目です。

1/4(2年に1回、1か月分)なら違法性は無いとするか、はたまた1/2(1年に1回、1か月分)までなら違法性は無い・・・・・は無いか。

関東の賃貸不動産管理会社及び大屋さんは判断に迫られます。当面借家法第二十六条上の、期間の定めの無い自動更新としておく方が無難かも知れません。
法定更新が強行規定(第二十八条  建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)であることを、説明するでしょうか。

神奈川県では、賃貸管理会社の管理手数料を補充するものとして、実は管理会社の収入になっている例が多いので、経営をもろに圧迫します。

今回の判例はおそらく、更新料分の家賃値上の正当な事由となりうるでしょうから、6ヶ月前までに賃借人へ家賃値上を通知しておけば、大屋さんは同一条件での更新を拒絶できると思われます。

そもそも、より普通の借家契約であり、更新料という考え方の無い、定期借家契約としておく方が、双方安心と思われます。
この場合、定期借家契約と言う物を知らないフロント営業マンの教育がネックとなります。
理解できた頃に辞めて行く様ですから。


関連記事:賃貸住宅の更新料は消費者契約法違反で無効        投資型賃貸マンションと資力の確保

関連情報:賃貸マンション:更新料、トラブル防ぐには 相次ぐ「無効」判決
 

毎日新聞 2009/09/08

更新料毎日.jpg
更新料を徴収している率の    1位:神奈川県    90.1%  平均0.8ヶ月分    2位:千葉県     82.9%     1.0    3位:東京都     65.0%     1.0    4位:埼玉県     61.6%     0.5    5位:京都府     55.1%     1.4


■ 大阪高裁、マンション賃貸借の更新料を有効と判断  JAPAN LAW EXPRESS  2009.10.29

■ 大阪高裁、更新料今度は「有効」 まぐまぐニュース!10月29日(木) 16時13分配信

■ 更新料は「有効」 最高裁が初の判断

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私の感じたこと - 高裁が賃貸更新料は「無効」と判断 (2009年8月29日 11:11)

大阪高裁で27日、賃貸更新料は消費者契約法に照らして無効であるとの判断がなされました。 「更新料は無効」の部分だけを読むと、いかにも今後更新料の受領は出来なくなるかのような錯覚を起こしてしまいますが、どうやら関西と関東では事情が違うようです。 消費者契約法は2001年4月に施行された法律で、その趣旨は「消費者の利益を一方的に害する契約の条項は無効」というものであり、今回の大阪高裁の判例は、正に消費者の利益を一方的に害する契約の条項であると決めつけるものでした。 何故このような判断となるのか? 関東のやり方だと、一般的には2年契約で期間満了ごとに1ヶ月分の更新料を受領するようになっています。 2年に1回受領する更新料は、消費者の利害を一方的に害する物ですか? 今回の大阪高裁の事例は、45,000円の賃料に対して1年ごとに更新料が100,000円という物でした。 仮に4年住んだとすると更新料は400,000円、賃料の約8.9ヶ月分となります。 関東の場合だと2年ごとに1ヶ月分なので、同じく4年住んだとすると90,000円となり、大阪高裁の事例は関東の4.4倍の費用を消費者が負担した事になります。 この高額な更新料負担にメスが入った訳で、日本全国一律で「更新料の受領は違法」ということにはならないと思っています。 大阪高裁の判決を受けて最高裁まで上告するらしいので、近々何らかの判断が示されるでしょう。 公庫融資の賃貸住宅など、一部を除き「更新料の支払いを条件としている契約」が殆どなので家主や不動産業界にとって非常に重大な問題です。 今後の動きが気になるところです。 続きを読む

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